健康診断の結果を正しく理解して健康に役立てましょう
健康診断を毎年受けて、特に異常が指摘されない場合でも、注意深く結果を確かめて食事や運動などに少し気をつけることで将来の生活習慣病発症を予防し、健康に役立てることができます。ただし、健康な方ほど健康診断の結果はよくわからず、要注意と記載されていても、どう注意したらいいのかわからないケースもあると思います。また、要精密検査という指摘を受けて専門医を受診しても、問題がない・良性疾患が発見されることも珍しくありません。こうしたことから、健康診断の結果を軽視して受診が遅れ、進行させて大変な治療が必要になってしまうことがあります。
健康診断の結果を正しく理解することができれば、将来の深刻な病気の予防や、心身への負担が大きい治療を受ける可能性を最小限にすることができます。多くの疾患は早期発見と適切な治療によって生活への影響を最小限に抑えて完治できる可能性が高くなります。当院では、各種の健康診断を行っており、その結果を理解したいという方や、要精密検査・要注意などの指摘を受けた方のご相談も幅広く受けています。ご自身のために、そして大事なご家族のために、健康診断の結果を役立てましょう。
健康診断で指摘されることの多い項目
健康診断の結果は、項目ごとにさまざまな病気リスクがわかるようになっています。そして、ある項目に異常がある、または異常値に近い場合、どうしたら正常値に戻すことができるのかを知ることで適切な予防が可能になります。軽度であれば負担の少ない日常生活の改善でも十分な効果を得ることができます。無理なく、楽に、生活の質を保ったままで健康な状態を保持するためにも、早期の適切な対処は重要です。
血糖値 血糖、ヘモグロビンA1c(HbA1c)
糖尿病やグレーゾーンの糖尿病予備群ではないかを調べる検査です。糖尿病は生活習慣病で、動脈硬化の発症や進行に大きく関わっており、毛細血管にも大きなダメージを与えるため深刻な合併症がいくつもあります。血糖値は直前の食事などによって大きく影響されますが、HbA1cは検査前の1~2ヶ月の平均的な血糖値を知ることができます。また当院では、ブドウ糖負荷試験など、隠れ糖尿病の発見も可能な詳細な検査も行っています。糖尿病は進行させてしまうと大変な治療が必要になりますが、早期の場合は食事や運動などによって適切なコントロールが可能です。血糖値の異常やグレーゾーンを指摘された場合には、お気軽にご相談ください。
血圧
血圧はストレスや緊張などで大きく変動し、家庭よりも診察室では高く出やすい傾向があるため、高血圧は診察血圧が140/90以上、家庭血圧では135/85以上となっています。ただし、1回計測して高い数値が出たから高血圧というわけではなく、ある程度の期間の変動を観察して診断されます。高血圧は血管壁に大きな負担をかけ続ける生活習慣病であり、動脈硬化を進行させて脳梗塞、脳出血、心筋梗塞といった深刻な疾患のリスクを上昇させます。早期に発見できれば減塩などの食事制限や習慣的な運動によって改善が可能です。血圧が高いと指摘されたら、血圧計を購入して毎日同じ時間に測って変化を記録し、高い血圧が続くようなら早めに受診しましょう。
脂質異常(LDL-C、HDL-C、TG)
血中には、悪玉のLDLコレステロール、善玉のHDLコレステロール、中性脂肪(TG)が存在しています。悪玉や中性脂肪が多い高脂血症に、善玉が少ない状態を含めたものが脂質異常症です。HDLは40mg/ dL以上、TGは150mg/ dL以下、LDLは70~139mg/dLが正常値とされています。脂質異常症は自覚症状なく動脈硬化を進行させ、血管の狭窄・閉塞を起こしやすい状態になって脳梗塞、脳出血、心筋梗塞リスクが上昇します。なお、すでに狭心症・心筋梗塞など虚血性心疾患がある場合には、LDLは100mg/dl未満に保つことが推奨されています。
尿酸(UA)
尿酸値が高い状態が続く高尿酸血症では、痛風発作を起こすリスクが高くなります。また痛風発作を起こさない場合も、虚血性心疾患を引き起こす動脈硬化や、腎臓などに深刻なダメージを蓄積させてしまう可能性があります。肉類、魚卵、ビールを含むアルコール飲料は尿酸値を上昇させやすいため、できるだけ控える必要があります。適切な治療を受けて尿酸値を正常値に保ち、血中の尿酸結晶をしっかり溶かすことが重要です。
尿タンパク・尿潜血
尿タンパクが指摘された場合には、慢性腎臓病が疑われます。尿潜血は見た目ではわからないほど微量の血液が尿に含まれているかどうかを調べる検査で、陽性の場合には腎臓がん・膀胱がん、尿管結石などの泌尿器科の疾患、腎炎などの腎臓内科的な疾患が疑われます。精密検査の結果、こうした病気がないことがわかるケースもありますが、万が一の早期発見のためにも指摘されたら必ず専門医を受診してください。
クレアチニン(Cr)・尿素窒素(BUN)
クレアチニンや尿素窒素は体内の老廃物で、この数値が高い場合には慢性腎臓病や慢性腎不全が疑われます。数値が正常値よりほんの少し高い場合でも、深刻な状態のケースがあります。また、損なわれてしまった腎機能を回復させることが困難です。腎不全になってしまった場合には、週に数度の何時間もかかる透析治療が生涯に渡って必要になるなど、生活の質が大きく低下してしまいます。クレアチニンや尿素窒素の異常があった場合には、できるだけ早く専門医を受診してください。特に生活習慣病がある場合には、早期の適切な治療が不可欠です。
肝臓 AST・ALT・γGTP・ALP・ビリルビンが高い、アルブミン(Alb)が低い。
こうした項目の異常は、肝臓機能の低下によって現れます。原因には、アルコールの過剰摂取、ウイルス感染、薬の影響などがあるため、まずは原因を確かめてそれに合わせた適切な治療が必要になります。
肝臓は毒素の分解、タンパク質や糖分などを合成するといった重要な役割を持っています。肝機能が低下すると、こうした役割を十分に果たせなくなり、進行して肝硬変を起こすと肝臓に行くはずだった血液が行き場を失って胃や食道に過剰な血液が流れ込み、血管が破裂して命に関わる可能性もあります。血液検査に加えて超音波検査で肝臓の状態を確認し、原因に合わせた治療が必要です。
膵臓 アミラーゼ
アミラーゼは膵臓でつくられる消化酵素で、通常は消化管に存在します。血液中に消化酵素が認められる場合、膵炎などが疑われます。膵炎は自覚症状がないまま進行するため、命に関わる状態になるまで発見できないこともあります。一般的な健康診断ではアミラーゼを調べないケースも多いですが、もしも検査項目にあって異常を指摘された場合には早急に受診する必要があります。
貧血 血色素量・赤血球量・ヘマトクリット
貧血は鉄分不足で起こるものというイメージが強いと思いますが、それ以外にも胃潰瘍・胃がん・大腸がんなどの重大な消化器疾患や女性の子宮筋腫などの出血によって生じているケースもあります。貧血を起こすほど出血しているというのは深刻な状態なので、貧血を指摘された場合には出血の可能性も考慮して、できるだけ早く受診して原因を調べる必要があります。